2018年8月11日土曜日

雨まち魚がいる遺跡

日本列島を猛暑が襲った8月上旬、関東方面への営業を終えた僕は、長野での釣りを楽しむため、道の駅にて車中泊を決め込んでいた。朝起きると寝ている間に雨が降ったらしく地面は濡れている。これは良い予兆だなと身支度を早めにすませ、千曲川上流域を目指し車を走らせた。途中コンビニで日釣り券を購入、今回は南佐久南部漁協の範囲内を楽しむことにした。


この日は台風が関東に近づいてきていた影響で、日が昇るほど雨が強くなる予報が出ていた。釣り始めこそ太陽が出ていたが、案の定8時をまわった辺りから雨がパラパラし始めた。

キャストを開始すると、どうやら夜間の雨が効いたのか、釣り始めから魚の活性は悪くない。猛暑&渇水の続く岐阜からすると、この活性の高さは嬉しい誤算だった。この谷の魚はアマゴが主体で全てヒレもキレイなことから、もともと居ないはずの場所に放流されたアマゴが再生産されているんだろうと推測された。


場所を移動してみても魚の活性は依然高いまま。それどころか、雨が強くなるにつれ水位はあがり、みるみる水の色もささ濁って来ると、もっと魚の活性は高くなってきたのだ。この谷付近でもきっとまとまった雨はかなり久しぶりだったのではなかろうか?きっと魚たちもこの雨を待ち望んでいたんだろうな。そう思うには十分過ぎるほど魚たちは乱舞してルアーを追って来てくれた。



魚の活性について特に印象的だったことがある。それは川幅3mもない、膝たけほどの水深のストレートな淵に入ったとき。淵尻からロングディスタンスをとった1投目でミスキャストをして流れ込み付近の小枝にルアーが引っかかってしまったのだ。横には葦があり、魚の隠れみのもある淵、どう考えても魚が居ない訳がない。しばし、「う〜む....」と考え込んだが、しょうがないので葦ギリギリをゆっくり上流に移動してルアーは無事回収出来た。ここで、今いま水の中を進んできたばかりの下流へルアーをほうり、ダウンで狙ってみる。すると、ルアーの後ろを凄い勢いで右へ左へ動きながら魚が追いかけてきたのだ。それも1匹だけでない。3匹が束になって狂い追いしてきたのだ。結局この3匹は3投するうちに全て釣り上げてしまった。こういう時は魚の活性のことなどは棚に上げ、釣りが上手いなぁ〜っと勘違いをしてしまう。雨のなか笑いが止まらなかった。


しかし、雨はさらに酷くなる。初めての場所で退渓点が分からなかったこともあり、身の危険を感じたため、深追いはせずこの3連続ヒットのあと納竿とした。もし、あのまま釣り上がっていたら、あとどれだけ釣れたのだろうか?もっと大きな個体も釣れただろうか?帰宅してからの釣り人の妄想はいつもつきることがない。




ビショビショになった服を着替え、次に訪れたのは、ど田舎の考古博物館。一体年間で何人訪れるのだろうと思うほど田舎にある博物館で、村役場と同じ敷地内に建っていた。入り口まで行くと、鍵がかかっていて、中に明かりもついていない。休館かな?とも思ったが、よく見ると『係員が居ない場合はブザーを押してください』とある。ブザーを押して大人2人の見学を希望すると、村役場の職員さんではないかと思わしきお兄さんが中から鍵を開けてくれた。金額は大人200円。目が点になるほど安い。二人でも400円しかかからない。その400円のためだけに、このお兄さんは僕らに拘束され、館内全ての電源を入れてくれたのだ。なんだか申し訳ないやらありがたいやら。

館内の写真撮影はオッケーとのことだったので、興味深い展示品をいくつか写真に納めさせて貰ってきたので、そのひとつをここで紹介したい。




石器時代、多くの先人たちは水辺のちかくを住処としていた。僕の家のまわりでもヤジリなどがよく見つかるが、ヤジリを見つけることが出来る場所を考えても、やはり川の付近で身を隠せる山などがある場所が生活圏内だったのだろうと想像できる。

この博物館が所有する栃原岩陰遺跡の出土品をみても、それはうかがえて、川の近くに暮らしていたので、釣針なども出土しているのだ。一万年前の僕らの祖先が、このあたりの川で既に魚釣りをしていたのかと思うと、興奮がなかなか押さえきれなかった。

彼らは、僕らとは違い、釣りと言っても生きるための手段だ。遊びで釣れた魚程度で僕らはこんなに一喜一憂しているのだから、生活がかかった一匹が釣れたときの嬉しさたるや、言葉に表せれないぐらい嬉しかったことだろう。雨が降ってささ濁った日なんかはルンルンで釣りに出かけたんだろうな、などと想像しながら、当時の暮らしに思いをはせたのだった。

古代史に興味のある方は近くに行った際、釣りの休憩時間にでもよってみるのも良いかも知れない。ひとしきり中を見たあとなら、博物館のすぐ横を流れる川の表情もすこし違って見えるかも。




2015年5月28日木曜日

僕らのゴールデンタイム

 5月後半、仕事がひとくぎりしたのを見計らって親友と山川を丸一日駆け回って来た。
今回の舞台は飛騨地方を流れる宮川水系のとある谷。白々と夜が明けた頃に現場に到着して早速準備を始めるが放射冷却もあり中々の寒さだった。インナーダウンの上にフリースまで着込んでのスタートとなったが、道路にある温度計では5度となってたのだから無理もない。

スタートから昼までは本流で一発大物を狙ってみたものの、これが裏に入り前半戦は全くもって良いところ無しと言うありさまだった。大物が潜むようなポイントは「いつ食って来るかっ!」と言うワクワク感が想像力をかき立てて楽しい半面、スカをくらうと全く魚の顔さえ拝めない事が多い。そのまま大場所で粘るか、谷に入って魚の顔を見に行くかはいつも難しい判断である。

今回はまともに寝ていなかった事もあり、車の中で小一時間の仮眠を取りながら後半戦の釣りに備え、昼からは綺麗な谷イワナに癒されに行く事にした。


林道を走り入渓点まで着くと、なんと前方から車が現れた。どうやらフライマンのようである。この谷は足場も良くバックも取りやすいのでフライマンには好まれそうな渓相なのだ。ここまでこれば人も居ないだろうと思っていたが、やはり釣り人同士考える事は皆同じと言う訳か...

今のフライマンが何処から何処までの区間を攻めたかは分からなかったが、先行者が表層しかナメていなかったらその後でも十分釣りが出来るはずと思い、ためらう事なく二人して川原まで降りて行った。

幸い、この場所には足跡は無い。ここからどれだけかの区間は本日僕らが最初の訪問者のようだ。キャストを始めると早速瀬の中から元気の良いイワナがウシワカに飛びついて来た。型は小さかったが出だしは好調だ。少し先でベンケイを操っていた親友も直ぐに竿を曲がらせていた。雪代も落ち着いて澄んだ流れの中を泳ぐイワナは何とも美しい。水面には朝の寒さとは打って変わって夏が来たような日差しが降り注いでいた。




この谷のイワナは石の色に同化するかのように全体的に黄色の体色をしているのが特徴だ。幾多の水害により、来る度に淵は砂利で埋まり魚の付き場は少なくなっている印象ではあるが、それでも懸命に命のバトンを繋いでこの谷独特の血統を残している。壊れても壊れても這い上がる命に野生の強さを感じずにはいられない。

淵や瀬で数えきれない程の魚と戯れながら谷を歩く事2時間あまり、橋の跡らしい朽ち果てたコンクリートの塊の影から今日一番の引きをするイワナが現れた。尺近くは有りそうなその魚体は今までに見た事がない程に黄色みが強く、殆ど金色と言ってもいい程の体色をしていた。これだからイワナ釣りはやめられない。これで釣った魚の写真ばかりを収めた自分だけの魚図鑑に新しい色をしたイワナの写真がまた一枚増えたのだ。久々に記憶に残る一匹との出会いだった。



谷のイワナに満足したので今度はヤマメに狙いをしぼってポイントを移動。気が付けば時間は5時半をまわりイブニングライズが起き始める頃となっていた。この場所は先ほどの谷とはそこまで離れていないものの、雰囲気はがらりと変わりヤマメの好きそうな長い瀬を持つ如何にも出そうなポイントだ。

初めて入る区間だったが有名河川だけあって車が停めれそうな所を探せば大体は川原まで降りる道がついている。ここではルアーのテストも兼ねてウシワカ65だけで勝負をしてみた。以前にも書いた事があるがこのウシワカ65、何故かルアーサイズの割に大きさを選ばず小さな個体まで釣れて来るのだ。

川原に降りるか降りないかでラフにキャストをしながら魚の反応を見ていると、直ぐに一匹目のヤマメが流れの中からルアーを引ったくった。サイズは22cm程度、ルアーと並べると実際より魚が小さく見えてしまうが、筋肉質で綺麗なヤマメだった。


やはり瀬に出ている魚を釣るのは楽しい。ヤマメやアマゴ特有のあの金属的なアタリは瀬釣りの醍醐味だろう。200mあるかないかの区間を行って帰ってする間に20〜24cm程度のヤマメを数匹、親友は良型のイワナを一匹追加してこの日の釣りは納竿となった。川から上がる時にはもう薄暗く街灯には無数の虫が群がっていた。

良くもまあこんな時間まで飽きる事なく釣り続ける事が出来るものだと自分でも関心してしまうが、釣りを趣味にしている人ならこんな経験心当たりがあるのではないだろうか。きっと魚の活性が高い低いに関わらず、釣り竿を持ってワクワクしている時間そのものが僕ら釣り人にとってはゴールデンタイムなのだろう。



2014年5月11日日曜日

五月雨の友情

GW後半、ルアーのテストも兼ねて親友と共にとある有名渓流に出かけて来た。暗いうちから車を飛ばしポイントに着いたのはAM6時。この日は1日雨の予報。それも午後からは荒れるかもしれないらしかった。雨の中レインウェアーを着込んで川に立つ。既に昨晩から降っているらしい雨と雪しろが重なり水位は15〜20cm程増しているようだった。

案の定、ここ数日の連休で足跡はベッタリだったがこの雨でリセットされている事を祈りつつキャストを開始する。すると僕が投げたウシワカに追尾する黒い影がさっそく現れた。これは幸先が良いと振り向くと親友の竿は既に弧を描いている。程なくして上がって来たのは22cm程のイワナだった。家族も増えて何かと時間の取れない彼にとって今回の釣行が今年最初となる。何とも幸先の良いスタートとなった。




その後も尺近いイワナを含め気持ちの良いテンポで魚は釣れて続けてくれた。何処から入渓してもやはり足跡だらけで、かなりの数の魚が顔を出すものの実際釣れるのはその極一部であった事から、もしこの恵みの雨がなければこの日の釣りは悲惨なものになっていたに違いないだろう。

そうこうしているうちに雨は小康状態となった。終始風は強く吹いていたものの雲間からは薄日が差し気持ちの良い新緑の香りが鼻先を通り抜ける。この頃の渓流は命の香りがしてなんとも心を穏やかにさせてくれる。




この日の親友は普段釣りに行けない鬱屈した思いを晴らすかの様にどんどん魚をキャッチしていた。一匹釣れたら交代しながら前に進んでいたので彼だけが良いポイントを攻めていた訳ではないのだが何故か彼ばかりにグッドフィッシュがついて来る。水位が増して流速も早かったので流れに強くしっかり足元まで泳ぎきってくれるベンケイを使い倒していたのも良かったのかもしれない。

  

昼時になったので車を止めやすい場所に移動して冷えた身体を温めるべくカップラーメンにお湯を注ぐ。待っている3分の間も勿体ないので川原に降りて数投するとここでもイワナが釣れてくれた。魚にとって雨の力は偉大だと言う事をまざまざと感じさせてくれる3分間だった。




後半戦も相変わらず彼はテンポ良く魚を釣り続けた。結局この日は暗くなってルアーが何処に着水したか分からなくなるギリギリまで魚を追い求め、心地よいを少し越えた疲労感と共に納竿となった。

帰りに入った温泉やお腹一杯に食べた夕飯と、彼も丸一日休日を満喫出来た事だろう。昔は毎週のように自転車を何時間も漕いで釣り場に行ったり、何日も車中泊をしながら釣旅をした親友も今は一家の主となりそれぞれの道を歩いている。今では一緒に過ごせる時間も少なくなってしまったが、彼との距離は今後も変わる事は無いだろう。もし二人が釣りをしていなければ今の僕らの仲は無かっただろう。彼に出会えた事、釣りに出会えた事に感謝したい。そう心から思える1日だった。 


2014年4月13日日曜日

サクラの花の咲く頃に



4月中旬、だいぶ出遅れてしまったがサクラの花の咲く頃にやっと今年初の鱒釣りに出かける事が出来た。仕事の忙しさもあり午後のみの釣行ではあったものの自分が思い描いた通りの展開で釣りが出来てかなり気持ちの良い幕開けとなった。

今年最初の渓流は長良川本流とそこに入る支流。3月後半から温かい日が続いた事もあり一気に春めいては来ていたが、流石に山奥の水はまだ身を切るような冷たさだった。今回の目的は取り合えず魚の顔を見る事と共に今季から導入した渓流ベイトでの釣りを自分の中で確立する事だ。数年前からユーザーさんと釣りをする機会に恵まれ、その中の数人がベイトアングラーだった事もあり何回か投げさせて貰ったのが渓流ベイトとのファーストコンタクトだったのだが、想像していた以上にベイトで渓流魚を狙う優位性を感じたのだ。

そんな事もあり渓流ベイトに興味を持ち始めていた頃、以前より交流のあった魚香竿(ウオカロッド)製作者の佐向氏が渓流用バンブーベイトロッドを発売した事もあり使わせて頂く事にしたのだった。


バンブーロッドを使ったのは始めてだったので実際ルアーを投げてアクションをさせてみるまでは全くどんな感じか想像も出来なかったが、このモデルは全体に柔らかいものの昔のバンブーロッドのイメージと違い全然ダルい柔らかさではなく軽いルアーでも竿のためを利用してストレスなく飛んで行く。

ベイトの為アキュラシー性能も抜群でスパスパと狭いスポットを狙える。かと思えば本流で65mm程度のルアーを投げてもこれまた全くストレスなくルアーは遠くへと飛んで行く。使えるルアーの幅がかなり広い。勿論、ベイトフィネス化の立役者であるAvail社製スプールの重要性も忘れてはいけないが、これには正直驚いた。

谷での釣果はと言えば、今年初フィッシュでいきなり尺上のイワナが釣れてくれた。それもなんとも完成された身体付きの綺麗なイワナだった。人の狙いにくい所を通してのキャッチだったのでサイズ以上にとても気持ちの良い一匹だった。その後違う谷で数匹イワナの顔を見たので夕マズメは長良川本流で終えようと谷を下る事に。




僕のホームグラウンドでもある長良川は南からやって来るサクラ前線と共にかなり長い期間サクラを楽しむ事が出来る。これは長良川の川沿いを走る国道156号に多くサクラが植えられている為で、サクラ街道としても有名だからだ。長良川を上流に向けて北上すると共に標高が高くなるので下の部落のサクラが終わっても上の部落のサクラが丁度満開と言う具合に少しずつ開花の期間がズレて長い間サクラを愛でながら釣りをする事が出来るのだ。


長良川本流ではウシワカ65のみで終始押し通してみた。このウシワカ65、サツキマスや本流アマゴの大型個体を狙う為に開発したのだが、何故か20cm程度の個体まで良く釣れてくれる。理由は良く分からないが嬉しい誤算だ。

この日もポイントに着いてから短時間のあいだに3匹の綺麗な20〜23cm程度のアマゴが竿をしならせてくれた。強い流れの中の一瞬よどんだスポットでレスポンス良く左右にロールしながら弾けるウシワカ65を引ったくり流れの芯を通って暴れるアマゴ達。しかし、3匹とも魚のパワーをロッドが吸収してくれるので全くバレる気がしないほど素直に魚が手元まで寄って来た。バンブーロッドの真骨頂を垣間みた夕マズメだった。





こうして2014年の渓流シーズンが華々しく幕を開けた。今年はどんな魚との、どんな風景との、どんな人との出会いが待っているのだろう。今年もいままで以上に騒がしく忙しい、何より楽しいシーズンになりそうな予感がしてならない。

2013年8月24日土曜日

夏の日の思い出


まだまだ秋の気配は全く感じられない8月後半、シンドラーユーザーでもある長谷川氏と奥美濃方面に出かけて来た。平日ではあったものの盆休み明けの渓流はどこもかしこも足跡だらけのうえ、連日続く猛暑の影響もありかなりキビシい状況だったのだが、そんな中でも二人とも宝石のような美形のアマゴに逢え、非常に有意義な一日となった。

辺りが明るくなった早朝5時半に入渓をして釣りを開始。ユーザーさんと釣りをご一緒させて貰う時、僕は殆ど竿を振らない。後ろからちょこっとは突いてみるものの基本的にはカメラを抱えてユーザーさんのフィッシングスタイルを拝見させて貰っている。そこには勿論、ユーザーさんに目一杯楽しんで欲しいと言う気持ちもあるのだが、自分のルアーを他の方はどう使うのだろうとか、釣り上がるテンポや立ち位置、はたまた流し方など自分と違うフィッシングスタイルを見て勉強したいと言う気持ちが強いからだ。




渓流ベイトの使い手である長谷川氏のロッドにはウシワカが付けられていた。決して重量級とは言えないウシワカではあるが長谷川氏からサイドキャストで放たれるルアーは精確にポイントを射抜いている。氏の鍛錬あってのたまものとは言え、昨今のベイトフィネスリールの進歩には本当に驚かされるものだ。しかし、この日の魚は如何にキャストが決まろうと、トレースラインがドンピシャであろうと、殆ど反応がない。日が昇り水温が上昇すれば今以上にキビシい戦いになる事は必至だった。


そんな状況を打破したのは入渓から一時間程経った頃だった。落ち込みから長いストレートがあるポイントの一番頭。ウシワカでは反応が薄かった為、一枚下の層を攻めるべくチェンジしたオモワザで勝負は決まった。長谷川氏のロッドをしならせ上がって来たのは朱点の上品な綺麗なアマゴだった。嬉しさがこみ上げ握手を交わす。この瞬間が単独釣行では味わえない極上の時間なのだ。




その後もキビシい状況は変わらず、アタリがあっても乗り切らないような食い方が多かった。結局朝一はもう一匹追加して二匹だけだったが、二匹ともサイズに関係なく満足出来る美しさで長谷川氏も楽しんで貰えているようだった。




陽が高くなって来たので今度は木の覆い茂った谷をセレクトしてみた。しかし、この場所もしっかり足跡が残っている。案の定「ここは追って来てもいいでしょ!」と言う所にキャストを決めても全く音沙汰無し状態が延々と続く。諦めムードで退渓しようと思っていた矢先、たまたま僕がキャストしたオモワザにイワナが飛びついて来てくれた。しかし、やはり後が続かず休憩がてら谷筋を大きく変える事にした時には12時を回りかけていた。




 車の中で手作りオニギリを頬張りながら談笑は続く。複数での釣行は移動時間も楽しいものだ。釣りについて、お互いの人生観について、などなど話しているうちに気が付いたらポイントに着いてしまうなんて事も多い。目指したポイントに着くと先駆者の車は幸いにも置いてなかった。お互い数時間しか寝て無かったので少しだけ仮眠を取り釣り再開。

結果から言うと、この場所ではガイド役であるはずの僕が長谷川氏を差し置いて最高に素晴らしい谷アマゴを釣ってしまった。長谷川氏はウシワカ、僕はオモワザを使っていたのだが、長谷川氏が打った後にどうしもそのポイントが気になりオモワザを角度やレンジを変えながら何度も打っていると突然銀色の輝きと共にロッドが絞り込まれたのだ。レンジ差がこれほど目に見えて釣果に現れたのは久しぶりだったし、尺まではいかなかったものの、僕がここ数年釣り上げた中では一番綺麗な谷アマゴだったので痺れるほど嬉しい一匹との出会いとなった。

ここでも結局この一匹だけでタイムアップとなった為、匹数的には貧相な結果ではあったが、長谷川氏も僕も互いに溜め息が出る様な美しい谷アマゴに出会え大満足な一日を過ごす事が出来た。精確

暑い暑い真夏の日のオトナ達は、
めいっぱい渓に浸かり竿を振り、
熱い熱い笑い声や雄叫びをあげコドモに帰る。

そんな夏の日の思い出となった。