そろそろ本流アマゴが本格的に動き出す頃だろうな...。そう思いながらも中々釣りにすら行けないままただただ仕事に明け暮れていた4月も中を過ぎた頃、半ば無理矢理仕事を終わらせ夕方の小一時間だけルアーのテストも兼ねて長良川の本流に出撃してきた。
家を出たのがPM4:00、車を走らせること約30分で最初の目的地に到着した。車を降りるとなんとも言えない大型河川特有の川の匂いが漂って来た。木々の蒸散混じりの谷川とはまた違うこの本流独特の匂いを嗅ぐと「また水辺に戻って来たなっ!」という感覚に捕われる。たぶんサツキ&サクラアングラーや本流個体を狙うのが好きな方なら誰しも同じ感覚になるはずだ。平日ということもあり人気はまるでない。ここの所まともな降雨も無かった為水位は多少低かったが雪しろも終わりに近く泡をはらんだ流れからは生命感がひしひしと伝わって来た。
「うん、釣れそう!居れば最初の数投が勝負だよな。」
ぼそっと独り言を呟いてウシワカ65の試作をラインに結ぶ。上空には無数の羽化した虫達が飛び交っていて流芯の向こう側ではライズが2回ほど起きていた。すかさずライズがあったポイントの上流辺りに投げてトゥイッチを入れる。幾つも作っているプロトのうち今回使ったのはタイトロールで流れに強くアクションのキレが特に良かったものだ。着水と同時に流れに同調させながらアクションを入れると一瞬何かが触れたような気がした。
大きくないがきっと次は食って来るだろうと確信してすかさず次のキャストに入る。フワッと弧を描いて着水したルアーをさっきと同じコースで流すと今度は明確なアタリがあった。っと同時にグルングルンとローリングして嫌がるアマゴの感触がラインを通して手元に伝わって来た。足元まで寄せると朱点の多い小ぶりなアマゴだった。
写真を撮ってから「お食事中失礼しました。」っと優しく流れに戻してあげると元気に泳いで行った。現場に到着してから時間にして5分少々の出来事だが魚が釣れる時なんて何時もこんなものだ。しかし、「今日は活性が高い日だなぁ〜」なんて思うとその後パタっとアタリすら無くなるなんて事もまた良くある話。この日もごたぶんに洩れずこの後300m程釣り下ったが全くアタリが遠のいたのだった。
そこで気を取り直して車で場所移動を試みる。基本的に僕の本流の釣りは一カ所で粘る釣りでなく数投して反応が無さそうならドンドン移動を繰り返すスタイルだ。実際本流で釣りをしている時間の3分の1以上が移動に時間を使っている。幸い長良川はポイントだらけの川なので少し車で移動するだけ次のポイントに到着出来るのだ。こういう川では何処が入川口か、何処に車を止めたらいいかを知っている事が最大の強みになるが、こればっかりは自分で探すしかない。突っ放すような言い方になったが、この『自分で探す』こそが釣りの一番の醍醐味でありワクワクの根源であると思うのだ。遠回りして自分でつかんだ場所や経験はお膳立てしてもらって釣った魚なんかより遥かに記憶に残るはずだからだ。
次の場所も実績が有る場所で居ればきっと5分以内に勝負が付くだろうと思いながら川原まで降りて行った。砂地には足跡があったが多分数日前のものだろう。流れが凝縮しながら大岩にぶつかったポイントに今度はオモワザを投入。かなり深い淵になっているので少しカウントダウンさせてからネチネチとルアーをダンスさせる。キャストをすること6投目でやはり早々と結果が出てくれた。大岩にぶち当たった重たい反転流の中に居たのは何とも綺麗な本流アマゴらしいアマゴだった。角度によって浮かび上がるパーマークの色がなんとも美しく「この色を再現するのが難しいんだよな」っとまじまじ見てしまった。
このアマゴの写真を撮り終えた所でこの日はタイムアップとなった。まだ、釣り自体は多少出来たが釣れても魚を写真に収めるにはあまりに光量が足りなくなって来たからだ。僕の中では魚を綺麗に写真に残せてこそ完結なので夕方の釣りはいつも光量との勝負となる。
今年もまだまだこの川にお世話になるんだろな、また無理やりでも時間を作って遊びに来よう。短時間でもアブレてもいいや、とりあえずこの川の匂いを嗅ぎに来よう...