2012年9月30日日曜日

予期せぬ出会い

台風17号上陸の一日前、無理矢理時間を作って今季最後となる鱒釣りに行って来た。今季最後の舞台は木曽川本流とそこに注ぐ枝谷。AM6:00現場に到着して重たい体で本流までのそま道を降りて行く。日頃の仕事でスタート時から既に谷を2本以上歩いた後のような足腰になっているのでいつもよりも慎重に慎重に前に進む。


朝方は木々が揺れる程の風が吹いていて体感気温もだいぶ低く感じる。動いている間はなんて事ないが止まっている時はかなり肌寒い。さて魚の反応はどうかとウシワカをキャストすると渕尻から早速アマゴらしき魚影が一瞬追尾してきた。しかし、同じ場所に投げても今度は反応がない。どんどん移動しながら流して行くがどの場所でも一回追わせた時に掛けなければ2回目は追ってこないようだった。全く反応が無いなら直ぐに移動も考えたが反応はあるので疲れた足腰でゴロゴロした石を乗り越えながら前に進む。すると150m程進んだ所で待望のヒット。ウシワカからウルトラヘビー重技の試作に変えて直ぐのヒットで朱点も綺麗な美形アマゴが口を使ってくれた。





そのまま前に進んでも良かったが前に進んだ先で上がる場所がない為、体力温存を計り次の場所に移動をする事に。しかし目星の付け居た大場所は想像通り足跡だらけでプレッシャーはかなりキツイようす。期間終盤は最後の追い込みを掛けたいという思いは誰しも同じなんだろう。


そこで、気持ちを切り替えて人が少しでも入りにくいだろう枝谷に逃げ込んだ。日が高くなったので木々が覆い被さっている所に狙いをつけて入渓。ここでは1時間の間にイワナが3匹釣れたがやはり上が開けている所よりブッシュになっている所の反応の方が断然良かった。




その後も枝谷を絡めながら本流をランガンして行きイワナを7匹程追加した時点で時刻はPM4:00を回っていた。毎年最後の釣行ではメモリアルフィッシュに恵まれているが今の所は尺を少し切るイワナが釣れただけなので最後のイブニングタイムに全てを掛けるべく大物も望めそうな本流に的を絞って場所を移動した。


既に足もフラフラで古傷のある左太ももが異常を訴え出してきた為そんなに長く歩く事が出来ないと判断、車を置いた所からそんなに深追いはしないと決め河原に降りるとここにも足跡がベッタベタに付いていた。しかし、ここで諦める訳には行かない。足跡がルアーマンでなく餌師である事を願いキャストを続ける事30分。途中イワナと思われるヒットを二回バラした後で「カンッ!」っと金属的なアタリがロッドに伝わってきた。瞬時にアマゴだと確信して気合いが入る。サイズもそんなに悪く無さそうだ。流れの中をいなして近くまで寄せると「んっ!???」と思わず発してしまった。アタリも引きも魚影もアマゴそのまま、しかし釣れて来た魚にはゾッとするような虫食い斑が付いている。イワナかと思い更に良く見るとしっかりと濃い色でパーマークも入っていた。キャッチすると人生2回目となるイワナとヤマメのハイブリッド種だった。普段見慣れないので写真を撮っていてもなんとも異様な感じがしたがこれもまた命ある物。一般的にはアルビノやこのような種は大きくなるまでに自然淘汰されてしまう運命にあるのだろうが自分に与えられた命を精一杯謳歌して欲しいと思いながら流れに戻してあげた。





今季の釣行はまさかの結果で幕切れとなったが、来年はどんな魚に出会えるだろうか。新しいフィールドでの新しい出会いに期待してまた性懲りも無く禁漁期間は地図を広げるのだろう...

2012年8月16日木曜日

僕らの夏休み

8月、バタバタしながらもなんとか三日程お盆休みが取れたので親友ヨシ君と飛騨方面へイワナを釣りに出かけた。本当は前日入りをしてテント泊をしながらののんびり釣行を予定していたのだけれど、あいにく前日から当日に掛けては雨。それも前日はかなり荒れた天気だった為、安全を考えて当日出発にしたのだった。

まだ夜も明けない時間に出発をして現地に到着したのが5時半ぐらい。想定はしていたが本流は濁りもキツく荒れていた為釣りにはならない状態だったので、水位変動の少ないポイントを探して入ってみる。しかし、最初のポイントは時間ばかり過ぎた割にお互い1匹ずつと絶不調だった。この区間のイワナは一瞬ルアーは追うもののルアーとの距離感が食って来る間合いではなかった。盆休みで釣り人の車も多く見られたので入れ代わり立ち代わり人が入った後だったのかもしれない。雨のお陰で人的プレッシャーがリセット出来ていると踏んだが考えが甘かったようだ。 



そこで気持ちを切り替え更に上流へ移動をする事に...

普段ならあまり人がやらないような水量の所が今なら水も出て活性も高くなっているのではないかと支流の支流に入り込んだのがそれが正解だった。苔の感じからするといつもより10cm程水量が増していて川通しをするのがギリギリの流速だったが元々の水深が深い訳でないので慎重に進めば前に行けない事もない。水も引き始めていたので期待を込めて第二ステージをスタートさせた。




車を降りて直ぐ、足場の高い場所から投げたヨシ君のオリジナルベンケイにイワナがヒット。20cm程度だったがこの沢の規模からすると妥当な大きさだろう。そしてここから前半戦の不調がウソのような巻き返しが始まる。二人して交互に投げるルアーめがけ面白いようにイワナがアタックして来る。サイズは18〜22cm程度とやはり大きくはないが流れの下から、流れのヨレから、白泡の中から、教科書通りの場所から理想的な出方をしてくれた。全てお腹はパンパンで落ちて来た虫、小枝、石など何でも口に入れているのだろうと容易に想像出来た。途中からは何匹釣ったか分からなくなる程の好活性ぶりだったのだ。



今回はあまりに流れが速過ぎたのと流れの下にルアーを入れなければ魚の反応が悪かったのでウシワカの出番は無かったけれど代わりにベンケイやオモワザが大活躍してくれ、やはりその場その場でルアーの使い分けをする事で更に魚に近づけるし、もっと釣りが戦略的になるのだと実感出来た釣行だった。


ヨシ君は僕がイワナの写真を撮っている数分の間にヤマメを2匹も連続で釣るなど久しぶりの釣りにしては十分過ぎる程満喫出来ていたのではないかと思うし、僕も僕で一番最後の滝壺ではオモワザの落とし込み&ボトムバンプ釣法で4キャスト4ヒットと思い描いた釣り方がバッチリハマった気持ちの良い一日となった。



昔は飽きる程毎日一緒にいた親友達も今はそれぞれに家庭を持ち忙しく自分たちの時間を歩いている。変わって行く現状と変わらない友情。これからも僕らの友情のそばには釣り糸が垂れている事をそっと願い僕らの夏休みは幕を閉じた。



2012年7月30日月曜日

豪雨&猛暑の鱒釣り

梅雨も空け切らない7月中旬。関東からシンドラーユーザーでもある友人の上野氏が遥々岐阜、富山まで釣りに来ると言うので、昼までに仕事を片付け荘川の道の駅まで車を走らせた。ただ、残念な事に前日からの大豪雨により既に到着している上野氏の情報では道の駅裏を流れる庄川本流は釣りが出来る出来ないの判断をする余地が無い程に大濁流になっているらしかった。

道の駅に着いて直ぐ上野氏を発見。握手を交わして挨拶をする。談笑がてら荘川蕎麦を食べていると少し晴れ間が見え出したので「せっかくなんでこんな状況でも釣りが出来そうな所に行ってみます?」っと、この日は完全に釣りを諦めていた上野氏を誘い出してみた。せっかく遠方から釣友が来てくれているのだから自分の引き出しをフルに使って釣りが成立しそうな所をランガンしてもらう事にしたのだ。


最初の場所はアタリはあったものの雨がまた降って来たので一時待機がてら直ぐに移動する事に。次の場所でも一瞬魚は追うもののフッキングまでにはいたらない。立ち位置、流し方は誰から見ても完璧な上野氏ではあったが水は引き始めたとは言え、水質もやっと魚がルアーを見つけれる程度だったし相当増水した直ぐ後ではやはりコンディションは最悪な状態だったのだ。しかし、上野氏は諦めない。っと言うか僕の釣るまで帰しません的なオーラのせいで釣り続けるしかなかったのかもしれない...


そして最後に入ったのは僕もあぶれ逃れでたまに立ち寄る里川。遂にダウンクロス気味に入ったミノーを理想的に引ったくったのは朱点の上品なアマゴだった。その後早過ぎる流れを考えダウンで狙ってイワナを一匹追加。正直、状況が状況だっただけに普通のレベルの人ならアブレて当然の日ではあったけれどテクニックの光った釣果だったと思う。




こうして上野氏との楽しいひと時は終了。又の再会を約束しての帰宅となった。っが、なんと帰りにあまりの大雨の為、郡上インターで高速道路を降ろされたうえ国道も通行止になってしまい、夜の9時まで足止めをくらうと言うハプニング付きの日となった。


日にちは変わって梅雨も空け連日猛暑の続く7月後半。真夏の木曽川本流にアマゴを求め一っ走りして来た。この日も午前中は仕事があった為に昼からの出発となったのだが、岐阜の平地より標高は高いと言えども本流辺りは暑い暑い。2時ぐらいから大きな淵や白泡噛んだ瀬など少しでも酸素が豊富で水温の低そうな所を突いてみたが反応のハの字も無い。夏あまご一里一匹とは昔の人も良く言ったものだ。この日も何時ものように10分程辺りを流して駄目なら直ぐに場所移動を繰り返すスタイルでランガンをしながらイワナ一匹しか釣れないまま夕方になった。



最後に来たのは大きな淵になった大場所。この場所は魚が居る事は絶対なので後はタイミングが合うかどうかが鍵だった。着いて早々、堰堤かどの流れが巻いている所を上からオモワザを使ってリフト&フォールをしていると下から25cm程のイワナが食い上げて来た。しかし、これは高さ3m程の所を抜き上げる時にバレてしまう。


気を取り直して、こんどはちゃんと下まで降りて再トライ。クロスで淵尻を流していたウシワカがピックアップ寸前で一気に持って行かれ流れの中で怒濤のローリングを受ける。一瞬綺麗なパーが見えて「ヤバイ、結構良いサイズのアマゴだ、これバレるぞっ」っと思った瞬間案の定ルアーだけがこちらに飛んで来た。


しかし、まだ魚は居るし気温も下がり丁度フィーディングタイムが始まったようなので悲しんでばかりもいられない。もっと底に居る個体を引きずり出そうとルアーをオモワザに変えてキャスト開始。白泡の中に落とし込んで底を転がすイメージでヒラを打たせて来ると直ぐにアタリがあった。今度はさっきより慎重にやり取りをしてなんとか魚を手中に収める事が出来た。釣れたのは頭から尾っぽの先まで一部の欠損もないとても綺麗なアマゴだった。非常に厳しい状況ではあったけれどこの一匹で全てが報われた気がした。



豪雨に猛暑、今年の7月は両極端の厳しい状況ではあったけれど諦めない気持ちがあれば必ずどこかに勝機を見いだせるものだと実感した釣行だった。

2012年6月19日火曜日

思えば遠くへ来たもんだ(四国編、其の二)

香川県でうどんを堪能した後、以前から通ってみたかった国道439号線(通称ヨサク)を走る為徳島県入りをして吉野川をどんどん上って行く我が軽ワゴン。この四国の背骨を突っ切る国道439号は岐阜〜福井間の国道418号、三重〜和歌山間の国道425号と並んで「日本三大酷道」と言われ、国道とは名ばかりなすれ違いも出来ない所あり、ガードレールもなく落ちたら直ぐ谷底の所あり、そこら中に落石あり、まだ舗装されてない場所あり、雨量規制ありの道なのだ。今回は以前から通ってみたかった京柱峠を高知県側からアタックしてみる事にした。


午後4時、吉野川本流から反れて待望の国道439号に入る。最初パラパラしていた雨も
この時には本降りになってきて幸先の悪いスタートだった。少し走るとまばらだった民家も一件ごとの距離が遠くなり茅葺き屋根を鉄の板で囲い直した古い家が多くなってくる。この段階で既に物凄く山の中で、平家の落人で逃げ隠れする様な目的が無いとこんな所に住まないぞと本気で思う程の限界集落だった。

遂に民家も無くなりかけた頃、二台の地元車とすれ違ったが待避所まで結構な距離をバックしなくてはならなかった。この二台ともすれ違い様びっくりした顔をしていたが、今思えばそれも当然。こんな陽が暮れ始めた雨の日にあんな道を通る人間は先ず居ないだろう。一台はすれ違ってから少し動かなかったが、もしかすると「危ないから引き返しなさい」と忠告したかったのかもしれない。


民家も無くなり延々と九十九折りの道は続く。まだ5時にもなっていないのに鬱蒼とした道はライトを点灯しないと走れないぐらいに暗い。幸い雨は小降りになったものの今度は代わりに霧が立ちこめて来て辺りの視界が利かなくなってしまった。もしナビが無かったら道が合っているかすら分からなくなる程だった。



全く峠の頂上まで出る気配がないままガードレールの無い道を心細く走ると、谷側に何十年か前に落ちたまま引き上げられる事も無かったのであろう古い型のバスが目に飛び込んで来て「完璧にやってしまった...こんな天気の夕暮れ時に一人で絶対通ってはいけない道だ...」と確信する。しかし、もうかなり上まで来てしまっているので引き返す事も出来ず峠を越えて徳島県側に入ったら道が良くなる事だけを祈りつつそのまま突き進む。



程なくしてやっとの思いで峠の頂上に到着。思いの他広い場所で峠の説明などもあり「ちゃんと人が通る国道なんだ」と少し安心した。しかし、安心したのもつかの間、徳島県側に入ると安心が恐怖に一変する。「高知県側より道が悪い...」アスファルトの舗装が綺麗にされてない上に拳大の落石も多く「ここでパンクしたら俗に言う遭難だぞ...」と思っていると追い打ちをかける様に大粒の雨、雨、雨。

山から落ちて来た雨は自分が進んでいる道を落ち葉と共に凄い勢いで川の様に流れて行く。スリップしてハンドルを切りそこねたら谷底に真っ逆さまだ。「やばい、死ぬかもしれない」と本気で思い始め、半べそを掻きながら必要以上にハンドルに力が入る。お昼までの素晴らしすぎる時間は遠く記憶の彼方に追いやられていた。


もうこの頃には写真を撮る余裕すら全くなく、国道439号が「酷道」と呼ばれるのにふさわしい光景が無いのが無事に生還した今だから残念に思う。そんな道を気が遠くなるほどクネクネと走り、廃墟ではあったけど建物が目に入った時は「抜けたぁ〜!!!」と一人大声を上げた程嬉しかった。そうこうしてやっと京柱峠の徳島県側からの入り口まで到着。大体2時間ぐらいだったけれど半日近くさまよって居たような気になるほど長く恐い道だった。この日はここから30分ぐらい行った所で温泉に浸かり祖谷そばを食べ、その後車中泊をして朝が来るのを待った。




そして遠征最終日。一晩中降り続いた雨も朝には上がり、天気も今日は良くなりそうだ。前日の昼間に買っておいたオニギリで簡単に朝飯を済ませたら釣りの前に奥祖谷二重かずら橋を散策する。一般的にはかずら橋と言えばアクセスも良い西祖谷のかずら橋を指すが、その更に奥には小規模の橋が並んで二つ掛かっている奥祖谷二重かずら橋があるのだ。受付の周りを掃除していたおばちゃんによると大きなお土産売り場やホテルが近くにある訳でなく大型バスも近づきにくいので本当に好きな人しか来ない隠れた名所らしい。確かに西祖谷のかずら橋も行った事があるが、ゆっくり写真を撮影するにはこちらの方が人も居ないし雰囲気もある。昨日はあんなに怖かった雨ではあったけれどお陰で朝霧が立ち、かずらも湿って艶っぽさを演出してくれている。ここで暫し時間を忘れて撮影タイム。









撮影も終わり残すミッションは四国のアメゴを釣る事と徳島に居る親戚の顔を見に行く事のみ。今日の夕方までには鳴門インターに乗って家路に着かなければならないので、ゆっくり川を楽しむ余裕は残されて無かったが、丁度、自分が通ろうと思っていた方向に教えて貰った川があったのでそこで2時間程竿を振ってみる事に。結果から言ってしまうと2匹しか釣れなかった。ただ、物凄く水の色が綺麗で渓層も抜群。どうやら先行者が居たようだったが残された時間の都合上移動する事も出来なかったのでそのままその谷で遊んだのだけど、2匹と言えども生命感のある個体で十分満足出来る川歩きが出来た。今度はじっくり一日掛けて来たいと思える川がそこには流れていた。










なごり惜しかったけど、昼にはこの渓谷にも別れを告げ次の目的地である親戚の家に向う。疲れて眠くなる事は目に見えていたので早めに出発して途中仮眠を取りながら徳島の親戚の家まで辿り着く。懐かしい風景、懐かしい匂い、懐かしい顔が今年も僕を向えてくれた。小一時間程寄らさせて貰ってたんまりお土産を頂き慌ただしく出発。泊まって行けとも言ってくれたし、出来ればそうしたかったけれど何せ明日から溜まった仕事が恐ろしい程押し寄せて来る事は目に見えていたので泣く泣く車に飛び乗った。

ここから各県のサービスエリアで何回も休憩&仮眠を繰り返し結局帰宅したのは次の日の朝4時。今回の旅は今までの一人旅の中で一番ハードスケジュールで一番遠かったけど、色々な人との出会いや発見に満ちたとても刺激的な旅だったと思う。今回の旅でこんな僕に一秒でも付き合ってくれた方々には言葉に現せれない程感謝の気持ちで一杯だ。また行きたい場所が増えた。また会いたい人が増えた。怖い思いもしたけれどとっても素敵な遠征となった。

記念に明石大橋を一人淋しくスローシンクロで自我撮り