GW後半、ルアーのテストも兼ねて親友と共にとある有名渓流に出かけて来た。暗いうちから車を飛ばしポイントに着いたのはAM6時。この日は1日雨の予報。それも午後からは荒れるかもしれないらしかった。雨の中レインウェアーを着込んで川に立つ。既に昨晩から降っているらしい雨と雪しろが重なり水位は15〜20cm程増しているようだった。
案の定、ここ数日の連休で足跡はベッタリだったがこの雨でリセットされている事を祈りつつキャストを開始する。すると僕が投げたウシワカに追尾する黒い影がさっそく現れた。これは幸先が良いと振り向くと親友の竿は既に弧を描いている。程なくして上がって来たのは22cm程のイワナだった。家族も増えて何かと時間の取れない彼にとって今回の釣行が今年最初となる。何とも幸先の良いスタートとなった。
その後も尺近いイワナを含め気持ちの良いテンポで魚は釣れて続けてくれた。何処から入渓してもやはり足跡だらけで、かなりの数の魚が顔を出すものの実際釣れるのはその極一部であった事から、もしこの恵みの雨がなければこの日の釣りは悲惨なものになっていたに違いないだろう。
そうこうしているうちに雨は小康状態となった。終始風は強く吹いていたものの雲間からは薄日が差し気持ちの良い新緑の香りが鼻先を通り抜ける。この頃の渓流は命の香りがしてなんとも心を穏やかにさせてくれる。
この日の親友は普段釣りに行けない鬱屈した思いを晴らすかの様にどんどん魚をキャッチしていた。一匹釣れたら交代しながら前に進んでいたので彼だけが良いポイントを攻めていた訳ではないのだが何故か彼ばかりにグッドフィッシュがついて来る。水位が増して流速も早かったので流れに強くしっかり足元まで泳ぎきってくれるベンケイを使い倒していたのも良かったのかもしれない。
昼時になったので車を止めやすい場所に移動して冷えた身体を温めるべくカップラーメンにお湯を注ぐ。待っている3分の間も勿体ないので川原に降りて数投するとここでもイワナが釣れてくれた。魚にとって雨の力は偉大だと言う事をまざまざと感じさせてくれる3分間だった。
後半戦も相変わらず彼はテンポ良く魚を釣り続けた。結局この日は暗くなってルアーが何処に着水したか分からなくなるギリギリまで魚を追い求め、心地よいを少し越えた疲労感と共に納竿となった。
帰りに入った温泉やお腹一杯に食べた夕飯と、彼も丸一日休日を満喫出来た事だろう。昔は毎週のように自転車を何時間も漕いで釣り場に行ったり、何日も車中泊をしながら釣旅をした親友も今は一家の主となりそれぞれの道を歩いている。今では一緒に過ごせる時間も少なくなってしまったが、彼との距離は今後も変わる事は無いだろう。もし二人が釣りをしていなければ今の僕らの仲は無かっただろう。彼に出会えた事、釣りに出会えた事に感謝したい。そう心から思える1日だった。