2013年8月24日土曜日

夏の日の思い出


まだまだ秋の気配は全く感じられない8月後半、シンドラーユーザーでもある長谷川氏と奥美濃方面に出かけて来た。平日ではあったものの盆休み明けの渓流はどこもかしこも足跡だらけのうえ、連日続く猛暑の影響もありかなりキビシい状況だったのだが、そんな中でも二人とも宝石のような美形のアマゴに逢え、非常に有意義な一日となった。

辺りが明るくなった早朝5時半に入渓をして釣りを開始。ユーザーさんと釣りをご一緒させて貰う時、僕は殆ど竿を振らない。後ろからちょこっとは突いてみるものの基本的にはカメラを抱えてユーザーさんのフィッシングスタイルを拝見させて貰っている。そこには勿論、ユーザーさんに目一杯楽しんで欲しいと言う気持ちもあるのだが、自分のルアーを他の方はどう使うのだろうとか、釣り上がるテンポや立ち位置、はたまた流し方など自分と違うフィッシングスタイルを見て勉強したいと言う気持ちが強いからだ。




渓流ベイトの使い手である長谷川氏のロッドにはウシワカが付けられていた。決して重量級とは言えないウシワカではあるが長谷川氏からサイドキャストで放たれるルアーは精確にポイントを射抜いている。氏の鍛錬あってのたまものとは言え、昨今のベイトフィネスリールの進歩には本当に驚かされるものだ。しかし、この日の魚は如何にキャストが決まろうと、トレースラインがドンピシャであろうと、殆ど反応がない。日が昇り水温が上昇すれば今以上にキビシい戦いになる事は必至だった。


そんな状況を打破したのは入渓から一時間程経った頃だった。落ち込みから長いストレートがあるポイントの一番頭。ウシワカでは反応が薄かった為、一枚下の層を攻めるべくチェンジしたオモワザで勝負は決まった。長谷川氏のロッドをしならせ上がって来たのは朱点の上品な綺麗なアマゴだった。嬉しさがこみ上げ握手を交わす。この瞬間が単独釣行では味わえない極上の時間なのだ。




その後もキビシい状況は変わらず、アタリがあっても乗り切らないような食い方が多かった。結局朝一はもう一匹追加して二匹だけだったが、二匹ともサイズに関係なく満足出来る美しさで長谷川氏も楽しんで貰えているようだった。




陽が高くなって来たので今度は木の覆い茂った谷をセレクトしてみた。しかし、この場所もしっかり足跡が残っている。案の定「ここは追って来てもいいでしょ!」と言う所にキャストを決めても全く音沙汰無し状態が延々と続く。諦めムードで退渓しようと思っていた矢先、たまたま僕がキャストしたオモワザにイワナが飛びついて来てくれた。しかし、やはり後が続かず休憩がてら谷筋を大きく変える事にした時には12時を回りかけていた。




 車の中で手作りオニギリを頬張りながら談笑は続く。複数での釣行は移動時間も楽しいものだ。釣りについて、お互いの人生観について、などなど話しているうちに気が付いたらポイントに着いてしまうなんて事も多い。目指したポイントに着くと先駆者の車は幸いにも置いてなかった。お互い数時間しか寝て無かったので少しだけ仮眠を取り釣り再開。

結果から言うと、この場所ではガイド役であるはずの僕が長谷川氏を差し置いて最高に素晴らしい谷アマゴを釣ってしまった。長谷川氏はウシワカ、僕はオモワザを使っていたのだが、長谷川氏が打った後にどうしもそのポイントが気になりオモワザを角度やレンジを変えながら何度も打っていると突然銀色の輝きと共にロッドが絞り込まれたのだ。レンジ差がこれほど目に見えて釣果に現れたのは久しぶりだったし、尺まではいかなかったものの、僕がここ数年釣り上げた中では一番綺麗な谷アマゴだったので痺れるほど嬉しい一匹との出会いとなった。

ここでも結局この一匹だけでタイムアップとなった為、匹数的には貧相な結果ではあったが、長谷川氏も僕も互いに溜め息が出る様な美しい谷アマゴに出会え大満足な一日を過ごす事が出来た。精確

暑い暑い真夏の日のオトナ達は、
めいっぱい渓に浸かり竿を振り、
熱い熱い笑い声や雄叫びをあげコドモに帰る。

そんな夏の日の思い出となった。




2013年8月6日火曜日

サニーデイ&レインデイ


6月、7月と関東方面からユーザーさんが遊びに来てくれたのでガイドがてらご一緒させて頂きました。

まず最初は快晴の中まだ山陰には残雪が残る源流を歩いたA氏との釣行。写真のように開けている場所は実際は少なく、かなりテクニカルなコースを選んで入渓したものの、キャストさえ決まれば殆どの確率で魚が顔を出してくれたのでランディングに至らないまでもかなりエキサイティングな時間が過ごせました。





この日は大嶋氏の製作するリーフの純銀を使用したモデルが大活躍。A氏が操るロッドからラインスラックを使い生命を受けたリーフは、四方八方にフラッシングを魅せ狂ったように次々とイワナが飛びついて来ていました。サイズは望めないものの天然のイワナを存分に楽しんで頂き、A氏も「上出来過ぎてもう当分渓流はいいや」と冗談まじりでおっしゃってくれたので僕もとても嬉しかったです。








続いては去年の豪雨釣行のリベンジのため岐阜入りをされた上野氏。前日までは天気も良く茹だる様な暑さだったのが一変、この日もなんと大雨に見舞われキビシい状況となってしまいました。しかし、そこはテクニシャン上野氏の事。まだベイトロッドが身体の一部になりきってないのでバラシが多いと言いながらもピンポイントにバシバシルアーをほおり込んでは精密にポイントを刻んでいき、狙った所で魚を出していました。





お互い、普段は単独で釣行する事が多いのでバラした時の悔しさや釣れた時の喜びを共有出来て本当に楽しかったです。大雨の中なんだかんだ言いながらもカッパまで着て朝から日が暮れるまで川に立つんですから僕らは完全に釣り好きの向こう側に行ってしまってるんでしょうね。来年こそはカッパ無しでリベンジしましょう!




オモワザのボトムバンプ釣法レクチャー中に釣れてしまった岩魚。上野さん横取りしてスミマセンでした(笑。しかし、改めて見ると結構な水量でしたね...




2013年4月21日日曜日

本流の薫り



そろそろ本流アマゴが本格的に動き出す頃だろうな...。そう思いながらも中々釣りにすら行けないままただただ仕事に明け暮れていた4月も中を過ぎた頃、半ば無理矢理仕事を終わらせ夕方の小一時間だけルアーのテストも兼ねて長良川の本流に出撃してきた。

家を出たのがPM4:00、車を走らせること約30分で最初の目的地に到着した。車を降りるとなんとも言えない大型河川特有の川の匂いが漂って来た。木々の蒸散混じりの谷川とはまた違うこの本流独特の匂いを嗅ぐと「また水辺に戻って来たなっ!」という感覚に捕われる。たぶんサツキ&サクラアングラーや本流個体を狙うのが好きな方なら誰しも同じ感覚になるはずだ。平日ということもあり人気はまるでない。ここの所まともな降雨も無かった為水位は多少低かったが雪しろも終わりに近く泡をはらんだ流れからは生命感がひしひしと伝わって来た。


「うん、釣れそう!居れば最初の数投が勝負だよな。」
ぼそっと独り言を呟いてウシワカ65の試作をラインに結ぶ。上空には無数の羽化した虫達が飛び交っていて流芯の向こう側ではライズが2回ほど起きていた。すかさずライズがあったポイントの上流辺りに投げてトゥイッチを入れる。幾つも作っているプロトのうち今回使ったのはタイトロールで流れに強くアクションのキレが特に良かったものだ。着水と同時に流れに同調させながらアクションを入れると一瞬何かが触れたような気がした。

大きくないがきっと次は食って来るだろうと確信してすかさず次のキャストに入る。フワッと弧を描いて着水したルアーをさっきと同じコースで流すと今度は明確なアタリがあった。っと同時にグルングルンとローリングして嫌がるアマゴの感触がラインを通して手元に伝わって来た。足元まで寄せると朱点の多い小ぶりなアマゴだった。



写真を撮ってから「お食事中失礼しました。」っと優しく流れに戻してあげると元気に泳いで行った。現場に到着してから時間にして5分少々の出来事だが魚が釣れる時なんて何時もこんなものだ。しかし、「今日は活性が高い日だなぁ〜」なんて思うとその後パタっとアタリすら無くなるなんて事もまた良くある話。この日もごたぶんに洩れずこの後300m程釣り下ったが全くアタリが遠のいたのだった。



そこで気を取り直して車で場所移動を試みる。基本的に僕の本流の釣りは一カ所で粘る釣りでなく数投して反応が無さそうならドンドン移動を繰り返すスタイルだ。実際本流で釣りをしている時間の3分の1以上が移動に時間を使っている。幸い長良川はポイントだらけの川なので少し車で移動するだけ次のポイントに到着出来るのだ。こういう川では何処が入川口か、何処に車を止めたらいいかを知っている事が最大の強みになるが、こればっかりは自分で探すしかない。突っ放すような言い方になったが、この『自分で探す』こそが釣りの一番の醍醐味でありワクワクの根源であると思うのだ。遠回りして自分でつかんだ場所や経験はお膳立てしてもらって釣った魚なんかより遥かに記憶に残るはずだからだ。



次の場所も実績が有る場所で居ればきっと5分以内に勝負が付くだろうと思いながら川原まで降りて行った。砂地には足跡があったが多分数日前のものだろう。流れが凝縮しながら大岩にぶつかったポイントに今度はオモワザを投入。かなり深い淵になっているので少しカウントダウンさせてからネチネチとルアーをダンスさせる。キャストをすること6投目でやはり早々と結果が出てくれた。大岩にぶち当たった重たい反転流の中に居たのは何とも綺麗な本流アマゴらしいアマゴだった。角度によって浮かび上がるパーマークの色がなんとも美しく「この色を再現するのが難しいんだよな」っとまじまじ見てしまった。



このアマゴの写真を撮り終えた所でこの日はタイムアップとなった。まだ、釣り自体は多少出来たが釣れても魚を写真に収めるにはあまりに光量が足りなくなって来たからだ。僕の中では魚を綺麗に写真に残せてこそ完結なので夕方の釣りはいつも光量との勝負となる。

今年もまだまだこの川にお世話になるんだろな、また無理やりでも時間を作って遊びに来よう。短時間でもアブレてもいいや、とりあえずこの川の匂いを嗅ぎに来よう...























2012年9月30日日曜日

予期せぬ出会い

台風17号上陸の一日前、無理矢理時間を作って今季最後となる鱒釣りに行って来た。今季最後の舞台は木曽川本流とそこに注ぐ枝谷。AM6:00現場に到着して重たい体で本流までのそま道を降りて行く。日頃の仕事でスタート時から既に谷を2本以上歩いた後のような足腰になっているのでいつもよりも慎重に慎重に前に進む。


朝方は木々が揺れる程の風が吹いていて体感気温もだいぶ低く感じる。動いている間はなんて事ないが止まっている時はかなり肌寒い。さて魚の反応はどうかとウシワカをキャストすると渕尻から早速アマゴらしき魚影が一瞬追尾してきた。しかし、同じ場所に投げても今度は反応がない。どんどん移動しながら流して行くがどの場所でも一回追わせた時に掛けなければ2回目は追ってこないようだった。全く反応が無いなら直ぐに移動も考えたが反応はあるので疲れた足腰でゴロゴロした石を乗り越えながら前に進む。すると150m程進んだ所で待望のヒット。ウシワカからウルトラヘビー重技の試作に変えて直ぐのヒットで朱点も綺麗な美形アマゴが口を使ってくれた。





そのまま前に進んでも良かったが前に進んだ先で上がる場所がない為、体力温存を計り次の場所に移動をする事に。しかし目星の付け居た大場所は想像通り足跡だらけでプレッシャーはかなりキツイようす。期間終盤は最後の追い込みを掛けたいという思いは誰しも同じなんだろう。


そこで、気持ちを切り替えて人が少しでも入りにくいだろう枝谷に逃げ込んだ。日が高くなったので木々が覆い被さっている所に狙いをつけて入渓。ここでは1時間の間にイワナが3匹釣れたがやはり上が開けている所よりブッシュになっている所の反応の方が断然良かった。




その後も枝谷を絡めながら本流をランガンして行きイワナを7匹程追加した時点で時刻はPM4:00を回っていた。毎年最後の釣行ではメモリアルフィッシュに恵まれているが今の所は尺を少し切るイワナが釣れただけなので最後のイブニングタイムに全てを掛けるべく大物も望めそうな本流に的を絞って場所を移動した。


既に足もフラフラで古傷のある左太ももが異常を訴え出してきた為そんなに長く歩く事が出来ないと判断、車を置いた所からそんなに深追いはしないと決め河原に降りるとここにも足跡がベッタベタに付いていた。しかし、ここで諦める訳には行かない。足跡がルアーマンでなく餌師である事を願いキャストを続ける事30分。途中イワナと思われるヒットを二回バラした後で「カンッ!」っと金属的なアタリがロッドに伝わってきた。瞬時にアマゴだと確信して気合いが入る。サイズもそんなに悪く無さそうだ。流れの中をいなして近くまで寄せると「んっ!???」と思わず発してしまった。アタリも引きも魚影もアマゴそのまま、しかし釣れて来た魚にはゾッとするような虫食い斑が付いている。イワナかと思い更に良く見るとしっかりと濃い色でパーマークも入っていた。キャッチすると人生2回目となるイワナとヤマメのハイブリッド種だった。普段見慣れないので写真を撮っていてもなんとも異様な感じがしたがこれもまた命ある物。一般的にはアルビノやこのような種は大きくなるまでに自然淘汰されてしまう運命にあるのだろうが自分に与えられた命を精一杯謳歌して欲しいと思いながら流れに戻してあげた。





今季の釣行はまさかの結果で幕切れとなったが、来年はどんな魚に出会えるだろうか。新しいフィールドでの新しい出会いに期待してまた性懲りも無く禁漁期間は地図を広げるのだろう...

2012年8月16日木曜日

僕らの夏休み

8月、バタバタしながらもなんとか三日程お盆休みが取れたので親友ヨシ君と飛騨方面へイワナを釣りに出かけた。本当は前日入りをしてテント泊をしながらののんびり釣行を予定していたのだけれど、あいにく前日から当日に掛けては雨。それも前日はかなり荒れた天気だった為、安全を考えて当日出発にしたのだった。

まだ夜も明けない時間に出発をして現地に到着したのが5時半ぐらい。想定はしていたが本流は濁りもキツく荒れていた為釣りにはならない状態だったので、水位変動の少ないポイントを探して入ってみる。しかし、最初のポイントは時間ばかり過ぎた割にお互い1匹ずつと絶不調だった。この区間のイワナは一瞬ルアーは追うもののルアーとの距離感が食って来る間合いではなかった。盆休みで釣り人の車も多く見られたので入れ代わり立ち代わり人が入った後だったのかもしれない。雨のお陰で人的プレッシャーがリセット出来ていると踏んだが考えが甘かったようだ。 



そこで気持ちを切り替え更に上流へ移動をする事に...

普段ならあまり人がやらないような水量の所が今なら水も出て活性も高くなっているのではないかと支流の支流に入り込んだのがそれが正解だった。苔の感じからするといつもより10cm程水量が増していて川通しをするのがギリギリの流速だったが元々の水深が深い訳でないので慎重に進めば前に行けない事もない。水も引き始めていたので期待を込めて第二ステージをスタートさせた。




車を降りて直ぐ、足場の高い場所から投げたヨシ君のオリジナルベンケイにイワナがヒット。20cm程度だったがこの沢の規模からすると妥当な大きさだろう。そしてここから前半戦の不調がウソのような巻き返しが始まる。二人して交互に投げるルアーめがけ面白いようにイワナがアタックして来る。サイズは18〜22cm程度とやはり大きくはないが流れの下から、流れのヨレから、白泡の中から、教科書通りの場所から理想的な出方をしてくれた。全てお腹はパンパンで落ちて来た虫、小枝、石など何でも口に入れているのだろうと容易に想像出来た。途中からは何匹釣ったか分からなくなる程の好活性ぶりだったのだ。



今回はあまりに流れが速過ぎたのと流れの下にルアーを入れなければ魚の反応が悪かったのでウシワカの出番は無かったけれど代わりにベンケイやオモワザが大活躍してくれ、やはりその場その場でルアーの使い分けをする事で更に魚に近づけるし、もっと釣りが戦略的になるのだと実感出来た釣行だった。


ヨシ君は僕がイワナの写真を撮っている数分の間にヤマメを2匹も連続で釣るなど久しぶりの釣りにしては十分過ぎる程満喫出来ていたのではないかと思うし、僕も僕で一番最後の滝壺ではオモワザの落とし込み&ボトムバンプ釣法で4キャスト4ヒットと思い描いた釣り方がバッチリハマった気持ちの良い一日となった。



昔は飽きる程毎日一緒にいた親友達も今はそれぞれに家庭を持ち忙しく自分たちの時間を歩いている。変わって行く現状と変わらない友情。これからも僕らの友情のそばには釣り糸が垂れている事をそっと願い僕らの夏休みは幕を閉じた。