2014年5月11日日曜日

五月雨の友情

GW後半、ルアーのテストも兼ねて親友と共にとある有名渓流に出かけて来た。暗いうちから車を飛ばしポイントに着いたのはAM6時。この日は1日雨の予報。それも午後からは荒れるかもしれないらしかった。雨の中レインウェアーを着込んで川に立つ。既に昨晩から降っているらしい雨と雪しろが重なり水位は15〜20cm程増しているようだった。

案の定、ここ数日の連休で足跡はベッタリだったがこの雨でリセットされている事を祈りつつキャストを開始する。すると僕が投げたウシワカに追尾する黒い影がさっそく現れた。これは幸先が良いと振り向くと親友の竿は既に弧を描いている。程なくして上がって来たのは22cm程のイワナだった。家族も増えて何かと時間の取れない彼にとって今回の釣行が今年最初となる。何とも幸先の良いスタートとなった。




その後も尺近いイワナを含め気持ちの良いテンポで魚は釣れて続けてくれた。何処から入渓してもやはり足跡だらけで、かなりの数の魚が顔を出すものの実際釣れるのはその極一部であった事から、もしこの恵みの雨がなければこの日の釣りは悲惨なものになっていたに違いないだろう。

そうこうしているうちに雨は小康状態となった。終始風は強く吹いていたものの雲間からは薄日が差し気持ちの良い新緑の香りが鼻先を通り抜ける。この頃の渓流は命の香りがしてなんとも心を穏やかにさせてくれる。




この日の親友は普段釣りに行けない鬱屈した思いを晴らすかの様にどんどん魚をキャッチしていた。一匹釣れたら交代しながら前に進んでいたので彼だけが良いポイントを攻めていた訳ではないのだが何故か彼ばかりにグッドフィッシュがついて来る。水位が増して流速も早かったので流れに強くしっかり足元まで泳ぎきってくれるベンケイを使い倒していたのも良かったのかもしれない。

  

昼時になったので車を止めやすい場所に移動して冷えた身体を温めるべくカップラーメンにお湯を注ぐ。待っている3分の間も勿体ないので川原に降りて数投するとここでもイワナが釣れてくれた。魚にとって雨の力は偉大だと言う事をまざまざと感じさせてくれる3分間だった。




後半戦も相変わらず彼はテンポ良く魚を釣り続けた。結局この日は暗くなってルアーが何処に着水したか分からなくなるギリギリまで魚を追い求め、心地よいを少し越えた疲労感と共に納竿となった。

帰りに入った温泉やお腹一杯に食べた夕飯と、彼も丸一日休日を満喫出来た事だろう。昔は毎週のように自転車を何時間も漕いで釣り場に行ったり、何日も車中泊をしながら釣旅をした親友も今は一家の主となりそれぞれの道を歩いている。今では一緒に過ごせる時間も少なくなってしまったが、彼との距離は今後も変わる事は無いだろう。もし二人が釣りをしていなければ今の僕らの仲は無かっただろう。彼に出会えた事、釣りに出会えた事に感謝したい。そう心から思える1日だった。 


2014年4月13日日曜日

サクラの花の咲く頃に



4月中旬、だいぶ出遅れてしまったがサクラの花の咲く頃にやっと今年初の鱒釣りに出かける事が出来た。仕事の忙しさもあり午後のみの釣行ではあったものの自分が思い描いた通りの展開で釣りが出来てかなり気持ちの良い幕開けとなった。

今年最初の渓流は長良川本流とそこに入る支流。3月後半から温かい日が続いた事もあり一気に春めいては来ていたが、流石に山奥の水はまだ身を切るような冷たさだった。今回の目的は取り合えず魚の顔を見る事と共に今季から導入した渓流ベイトでの釣りを自分の中で確立する事だ。数年前からユーザーさんと釣りをする機会に恵まれ、その中の数人がベイトアングラーだった事もあり何回か投げさせて貰ったのが渓流ベイトとのファーストコンタクトだったのだが、想像していた以上にベイトで渓流魚を狙う優位性を感じたのだ。

そんな事もあり渓流ベイトに興味を持ち始めていた頃、以前より交流のあった魚香竿(ウオカロッド)製作者の佐向氏が渓流用バンブーベイトロッドを発売した事もあり使わせて頂く事にしたのだった。


バンブーロッドを使ったのは始めてだったので実際ルアーを投げてアクションをさせてみるまでは全くどんな感じか想像も出来なかったが、このモデルは全体に柔らかいものの昔のバンブーロッドのイメージと違い全然ダルい柔らかさではなく軽いルアーでも竿のためを利用してストレスなく飛んで行く。

ベイトの為アキュラシー性能も抜群でスパスパと狭いスポットを狙える。かと思えば本流で65mm程度のルアーを投げてもこれまた全くストレスなくルアーは遠くへと飛んで行く。使えるルアーの幅がかなり広い。勿論、ベイトフィネス化の立役者であるAvail社製スプールの重要性も忘れてはいけないが、これには正直驚いた。

谷での釣果はと言えば、今年初フィッシュでいきなり尺上のイワナが釣れてくれた。それもなんとも完成された身体付きの綺麗なイワナだった。人の狙いにくい所を通してのキャッチだったのでサイズ以上にとても気持ちの良い一匹だった。その後違う谷で数匹イワナの顔を見たので夕マズメは長良川本流で終えようと谷を下る事に。




僕のホームグラウンドでもある長良川は南からやって来るサクラ前線と共にかなり長い期間サクラを楽しむ事が出来る。これは長良川の川沿いを走る国道156号に多くサクラが植えられている為で、サクラ街道としても有名だからだ。長良川を上流に向けて北上すると共に標高が高くなるので下の部落のサクラが終わっても上の部落のサクラが丁度満開と言う具合に少しずつ開花の期間がズレて長い間サクラを愛でながら釣りをする事が出来るのだ。


長良川本流ではウシワカ65のみで終始押し通してみた。このウシワカ65、サツキマスや本流アマゴの大型個体を狙う為に開発したのだが、何故か20cm程度の個体まで良く釣れてくれる。理由は良く分からないが嬉しい誤算だ。

この日もポイントに着いてから短時間のあいだに3匹の綺麗な20〜23cm程度のアマゴが竿をしならせてくれた。強い流れの中の一瞬よどんだスポットでレスポンス良く左右にロールしながら弾けるウシワカ65を引ったくり流れの芯を通って暴れるアマゴ達。しかし、3匹とも魚のパワーをロッドが吸収してくれるので全くバレる気がしないほど素直に魚が手元まで寄って来た。バンブーロッドの真骨頂を垣間みた夕マズメだった。





こうして2014年の渓流シーズンが華々しく幕を開けた。今年はどんな魚との、どんな風景との、どんな人との出会いが待っているのだろう。今年もいままで以上に騒がしく忙しい、何より楽しいシーズンになりそうな予感がしてならない。